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2011
SONY GPS-CS3の内部
SONY GPS-CS3の内部を覗いてみた
暇なのでSONYのGPSロガー GPS-CS3 を分解して内部を覗いてみた.GPS-CS3の内部構造はシンプルで分解も簡単だった.内部の写真を見ておわかりのようにATLAS ASG-1のような防水構造にはなっていないので、雨天の日の取り扱いは要注意だ.
内部で使われているチップセットは SAMSUNG GPD14B03 という型番で、聞いたことがないものだったが、データシートを探してみたところ詳しいPDF資料がネットに流出していた.流出資料のようなので、このサイトにいつまで置かれているかは微妙なところだが、入手してみたい人は下記のサイトにアクセスして見て欲しい.
SAMSUNG GPD14B03データシート(PDF)
http://www.nemohk.com/nemo/admin/editubb/UploadFile/2009312162322219.pdf
このデータシートには、チップセットの細かな電気的な仕様やサポートしているNMEA-0183プロトコルなどが記載されている.SONYの実装ではUSBマスストレージクラスのデバイスとしての使い方しかサポートしていないようだが、チップセット自体はシリアルデータ通信によるコマンドにも対応しているようだ.
上手くコマンドを送り込むことができれば、ログ取得間隔(15秒固定)等のパラメータを設定することができそうだ.但し、USBのインタフェースがマスストレージクラスとして実装されているので、USB側からシリアルコマンドを送り込むのは無理かもしれない.SONYが独自に実装したファームウェア部分がブラックボックスなので一般のユーザには手が出せないだろう.
このチップセットのカタログスペックでは受信感度として
Aquisition : -142dBm
Navigation : -156dBm
Tracking : -159dBm
となっている.実際には組み合わせるアンテナモジュールの性能や取り付け位置などで受信性能は大きく変わるのでカタログスペックを鵜呑みにする訳にはいかないが、他の代表的なGPSチップセットと比較しても遜色のない受信性能かもしれない.
チップセットのドキュメントを眺めていたらチップセット自体はUARTによるシリアル通信しかインタフェースがないので、SONYがフラッシュメモリや制御用のファームウェアを独自に実装している模様.USB周りに関しては、ASG-1のように単なるシリアル通信用のプロトコル変換チップを載せているのではなく、GPSチップセットから送られてきたNMEA-0183形式のデータを加工してからフラッシュメモリに記録しているようだ.
チップセットのドキュメントによると、GGAが吐き出すデータの高度に関してはWGS84楕円体に対しての高度で、ジオイド補正は施していないと明記されている.一方GPS-CS3が吐き出すログ内容では、
$GPGGA,030441,3524.2867,N,13909.8062,E,1,06,01.3,00337.2,M,039.4,M,00,0000*4A
のように、ジオイド補正された標高 337.2mとジオイド高 39.4m の両方が出力されているので、この部分はSONYが独自に実装しているのだろう.
ちなみにSONY自身もGPS関連のモジュールを作っているようだが、自分の所のGPSモジュールは性能や値段の面で手が出せなかったのだろうか?
http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/pro/mobile/gps.html
フロントパネルを外したところ(薄紫色の四角い物体はアンテナモジュール)
中の部品は2枚のプリント基板に分かれて実装されている
心臓部のSAMSUNG GPD14B03 チップセット
基盤の裏側には恐らくフラッシュメモリとファームウェア、USB周りの制御回路が実装されている