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2007
4/20 海部から尾崎へ『室戸岬を目指して』
4/20 海部から尾崎へ『室戸岬を目指して』
室戸岬を目指して
朝目が覚めるとまだ外は暗かった.水平線の向こうが徐々に明るくなり、手前の暗い海の色と空のグラデーションが重なり、何とも言えない神秘的な光景だった.時間が経つのも忘れて明け行く神秘的な景色に見とれていた.
朝食を済ませチェックアウトをしているとフロントの方が、歩き遍路の方へのお接待ですと言って、おにぎりのお弁当をお接待してくれた.このようなリゾートホテルで、個人のお遍路さんにここまで気を遣っていただけるとは思ってもみなかった.
ホテルから昨日中断した海部大橋まで戻りそこから再びスタートした.国道55号線を宍喰方面へ向けて那佐湾沿いを歩いていると、筏が湾に浮かんでいる.どうやら養殖の筏ではなく釣り客用の筏のようだ.このような波静かな入り江で筏の上でのんびり釣りをしている光景を想像するだけで何となく楽しくなった.那佐湾は奥深くまで入り込んだとても狭い湾で、海と言うよりは大きな川のようだった.
宍喰の道の駅で暫く休憩した後、県境の甲浦方面に向かう.水床トンネルを抜けるとそこから先はいよいよ修行の道場である土佐の国だ.トンネルを出ると直ぐに県境を示す道路標識があった.県境を越えるときに思わず両手を広げてバンザイをしてしまった.足のトラブルで辛く苦しい思いをした阿波の国だったが、いざ離れるとなると何となく名残惜しかった.
甲浦の海岸の公園で今朝戴いたおにぎりのお弁当を食べていると、お遍路さんを乗せた大型バスが何台も通り過ぎて行く.この人達は今日はどこまで行くのだろうか.今日一日歩いても室戸岬にすら辿り着くことができないのに、この人達はあっという間に最御崎寺に着いてしまうのだろう.
遍路を追えた後で振り返ってみても札所での思い出よりも札所と札所の間を歩いているときの思い出の方が強烈に残っている.バスツアーが一日で何カ所の札所を廻るのかは知らないが、半ば観光客気分の団体のお遍路さん達を見ていると何となく空しくなる.
東洋町に入るとサーファー目当ての民宿が目に付くようになり、サーフショップなども見かけるようになった.東洋町は国道沿いに家が建ち並んでいるだけのとても小さな町だったが、この町の名前は私でも知っていた.原発の廃棄物処分場問題に絡んだ町長のリコール騒動で揺れたあの町である.これといった産業も無い県境の過疎の町に町議会議員選挙のポスターだけが目立っていた.
野根地区に入ると遍路道沿いに東洋大師(明徳寺)があるので寄って行くことにした.徳島の遍路道を歩いているときに、遍路道の至る所に東洋大師のメッセージが書かれた札を見かけていたので、どのようなお寺なのか確かめてみたかった.
こぢんまりとした小さなお寺だったが境内には通夜堂が建てられており、野宿お遍路さん達がよく利用しているようだった.お参りの後で納経帳に墨書きと朱印を押して貰おうとしたが、誰も居ないようだったのでそのまま東洋大師を後にした.
野根の街中を歩いていると野根饅頭の看板を見かけるようになった.私はあんこの類が嫌いなので買いはしなかったが、これから先の何もない海辺の長時間国道歩きには、お饅頭は絶好の行動食かもしれない.野根の街で飲み物や食料を調達して行こうと考えていたのだが、お店が見つからないまま街を抜けてしまった.この先佐喜浜という所までお店も自販機もないらしいので少し不安になった.
野根の街を抜けると、ここからさきは延々と海岸線の国道歩きが続くことになる.海岸線の崖沿いの道では真正面から吹いてくる強い南風の手荒い歓迎を受けた.風を遮る物が何もないので台風並の強さの風が絶え間なく襲いかかる.日射しは強いがとても菅笠を被っていられる状態ではない.上空を飛んでいる鳶も時折風にあおられて飛びにくそうだ.反対方面からやってきた自転車野郎たちが風に乗って気持ち良さそうに駆け抜けていく.向かい風が何とも恨めしかった.
行けども行けども代わり映えのしない同じような景色が続く.遙か先の岬が霞んで見えるが、目指す室戸岬はもっと先のようだ.このあたりの海岸線は丸く大きな石で埋め尽くされている.波にもまれてゴロゴロと不気味な音を立てるのでこの石のことをゴロタ石と呼んでいるそうだ.
強風と強い日射しで喉がカラカラになりながら夕方4時近くになってようやく佐喜浜の街に着いた.体中の水分が蒸発して干物にでもなった気分だった.スーパーで冷たい飲み物とおにぎりを買いベンチで一休みした.冷たいお茶で水分補給をしてようやく生き返ったようだ.
今夜の泊まる予定の宿はこの先にあるロッジ尾崎で、佐喜浜の街からは3kmくらいなので5時前には宿に着けそうだが、一応これから伺いますと連絡を入れておくことにした.宿では若いご主人が迎えてくれた.今日は私の他にもう一人お遍路さんが泊まっているだけで、空いているようだった.前日までは予約で一杯だったらしいので、運良く混雑の谷間に当たったようだ.お遍路シーズンは歩きのお遍路さんたちが団子状になって動くので、このような現象は良くあるらしい.
宿のお風呂がペンキを塗り替えている最中らしく、ご主人の自宅のお風呂を使わせていただいた.この日は若いご主人と奥さんが食事などのお世話をしてくれた.ご主人の話ではこの宿は夏場はお遍路ではなくサーファーで賑わうと言っていた.すぐそばにちょっとした砂浜の海岸があって、そこはかなり良い波が立つのでサーファが良く訪れるのだそうだ.
宿泊した部屋は一番端の道路に面した角部屋だったので、潮騒の音を聞きながら布団に入ることができたが、夜中に時折通る大型トラックの騒音がちょっと耳障りだった.
起点
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経由地
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終点
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区間距離
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累積距離
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備考 |
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遊遊NASA |
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場外霊場 東洋大師
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14.0 km |
14.0 km |
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場外霊場 東洋大師 |
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ロッジ尾崎
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18.3 km |
32.3 km |
この日の歩数:54,647 歩 【累積歩数:466,182 歩 】 歩行距離:32.3 km【累積歩行距離:258.4 km 】
宿泊先: ロッジ尾崎 【 TEL 0887-27-2065 】
〒781-7220 高知県室戸市佐喜浜町708-3
2食付き 5,500円 (遍路宿情報ネットワークの資料より)正確な支払金額は不明です
洗濯機・乾燥機 : 有り(遍路宿情報ネットワークによると無料らしい)
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