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2007
5/19 別格15番箸蔵寺から66番雲辺寺へ
5/19 別格15番箸蔵寺から66番雲辺寺へ
箸蔵寺へ
朝7時過ぎ、宿にお願いして荷物を置かせて貰い、吉野川左岸の県道267号線を箸蔵寺へ向かった.吉野川は白地荘のある池田町付近で大きく東に向きを変え、四国中央構造線に沿って徳島方面へ流れていく.吉野川が大きく曲がる地点には徳島自動車道のアーチ状の橋が架かっているが、橋のデザインが美しいのでそれほど違和感はない.自然破壊であることには変わりはないが、美観を損ねていないだけましだ.
池田の街は吉野川の右岸側に集中していて左岸は殆ど民家もなく車も殆ど通らない.このところの小雨で吉野川の水量は少ないようだったが、それでも四国三郎と言われるだけあって蕩々と水が流れている様は優雅だった.深い緑色をした水面が印象的だった.
殆ど車の通らないひっそりとした道を歩いていると、川岸に香川用水の取水施設があった.案内板には『香川用水取水工』と書かれている.取水口ではなく取水工というらしい.香川用水は小学校の社会科の授業で習ったような気がする.ここから阿讃山脈を貫く形でトンネルを掘り、山の向こうの香川県まで水を引いているという.こんな険しい山の中をくり抜いて山の向こう側の香川県まで水を引くという気概に関心してしまう.
取水工を過ぎるとやがて大きなダム施設が現れた.池田ダムだ.この辺りまで来ると左岸側にもだいぶ民家が増えてきた.箸蔵の街中に入ると左手の小高い山の斜面にロープウェイが通っているのが見えてきた.想像していたよりも立派なロープウェイだった.
遍路地図では JR土讃線の線路と国道32号線を渡った先に、箸蔵寺への遍路道の入り口があるはずであるが、遍路標識らしき物は見あたらなかったので、感を頼りに山の斜面につけられた細い農作業道を息を切らせながら登って行った.やがて遍路道らしい風情のある道になったので、この道で正解だったようだ.
別格のお寺なので遍路道が荒れている事を予想していたが、とても良く整備された綺麗な歩きやすい遍路道だった.この道を歩いて登るのはハイキング客か歩きのお遍路さんぐらいしか居ないのだろうが、今でも参道としてきちんと整備されているようだった.傾斜はきついが歩いていてとても気持ちの良い遍路道だった.
山道が終わり、ロープウェイの支柱が立っている開けた場所に出た.階段の先には大きな山門が建っている.今はロープウェイで麓から一気に登ってしまうが、昔はここが参道の表玄関だったようだ.ここまでは車で上がって来るこ
山門をくぐると暫く緩やかな上り坂が続いた.鞘橋という赤い屋根のある小さな橋が参道に架かっていた.橋の手前に狛犬ならぬ天狗が置かれている.参道には大きな鳥居が建てられていたりしてどことなく神社の参道を歩いているような気がする.鞘橋を渡るとそこから先は延々と階段が続いていた.
『昇っても昇っても長い階段』などと思わずフレーズを口ずさみたくなるような階段の連続だった.ようやくお寺の境内に辿り着いたときには汗だくになっていた.境内を見廻すと納経所の有る大きな建物(本坊)とその奥に本堂らしき立派なお堂が建っている.境内の案内板を見ると本堂だと思っていた立派なお堂は護摩殿で、本堂(本殿)はさらに階段を昇った山の上にあるようだ.それにしても大きなお寺だ.この山全体がお寺の境内になっているようだった.
汗が引くまで暫く本坊の横の休憩所で休ませて貰うことにした.休憩所で休んでいるとロープウェイに乗ってきたと思われる人達が本殿へ向かって行く.殆どの人は普段着で参拝に訪れているので、このお寺はお遍路さんより一般の参拝客の方が多いのかもしれない.
汗も引いてきたので気を取り直して本堂へ向かった.本殿へ向かう最初の階段を昇っていくと正面にちょっと変わった建物が建っていた.建物の1階部分は空洞で天井中央の穴から太い縄が一本垂れ下がっている.天井中央の穴から上を覗くと中に鐘が吊されていた.どうやらこの建物は鐘楼堂のようだ.
鐘楼堂から本堂へはまた気の遠くなるような長い長い階段が続いていた.上を見上げて思わず絶句してしまった.長い階段をやっとのことで昇り終えると真正面に八棟造りの立派な本殿が聳えていた.このお寺の本尊は金毘羅大権現というちょっと変わったご本尊で、本殿に掛けられていた巨大な天狗の面や狛犬など何とも言えぬ不思議な味を醸しだしていた.
それにしても広い境内だ.とても山の頂にあるお寺とは思えない.優にサッカーコート2〜3面分くらいはありそうだ.私はこのお寺の事を何も知らなかったが、箸蔵寺は結構名の知られた有名なお寺のようだった.境内には楓の木がたくさん植えられているので、秋の紅葉シーズンにはさぞかし素晴らしい紅葉を堪能できることだろう.
本堂でのお参りを済ませ大師堂へ向かうが、大師堂は広い境内の左隅にちょこんと建てられていた.一般の参拝客は大師堂には殆どお参りをしていないようだった.このお寺の参拝客の多くは金比羅さん信仰でお参りに来ているようだ.
大師堂でのお参りを済ませ納経所で納経帳に墨書きと朱印をいただく際に、納経所の方に階段の段数を聞いてみた.正確な数は忘れたが確か七百数十段と言っていたような気がする.このお寺は金比羅さんの奥の院だそうだが、本家の金比羅さんに負けず劣らず階段だらけのお寺だった.
これまでお参りしてきた大山寺、慈眼寺、出石寺、仙龍寺、興隆寺、そしてこの箸蔵寺.いずれも通常の遍路コースを大きく外れた山の上や奥地にある別格のお寺なので普通のお遍路さんは立ち寄りもしないのだが、そういう辺鄙な場所のお寺の方が遙かに味わい深い素晴らしい体験をすることができた.
お遍路を終わってから印象に残っているお寺を思い出すと、その殆どが別格のしかも山の上の辺地のお寺だった.八十八カ所のお寺でまた訪れてみたいと思うようなお寺は数えるほどしか無かった.
帰りも歩いて山を下りるつもりだったが、珍しい方式のロープウェイを見ているうちに乗ってみたくなった.歩き遍路なのでコースの途中で乗り物を使うのは少し抵抗があったのだが、ロープウェイに乗ってみたいという誘惑の方が勝ってしまった.ここまで登ってきたのだから下りるときくらいロープウェイを使っても罰は当たらないよねなどと自分で勝手な言い訳をしていた.
このお寺のロープウェイはゴンドラが2本のケーブルに吊り下げられている複式単線交走式普通索道(DLM)と言うちょっと変わったロープウェイだった.片道800円ほどだったが、ガイドさんの案内付きでちょっとした観光気分を味わうことができた.ロープウェイのゴンドラからは麓の街並みや吉野川を見下ろすことができ、とても楽しいロープウェイだった.
雲辺寺へ
宿に連絡を入れると預けてあったザックを白地郵便局のところまで車で持ってきてくれるというのでお言葉に甘えさせていただいた.郵便局の前でザックを受け取り雲辺寺へ向かうが、途中のコンビニで昼食を買って行きたかったので、国道192号線沿いにあったヤマザキのお店で食料を調達し、その先から県道268号線に合流することにした.
遍路地図に載っている国道192号線から県道268号線に向かうバイパス道路を探すが、そのような道は一向に見つからなかった.仕方がないので一旦ヤマザキのお店まで戻ってから、かなり遠回りをして県道268号線に入った.この迂回で1時間以上時間をロスしてしまった.
県道268号線は長くて退屈な山の中のアスファルト舗装の道だった.車道なので勾配はそれほどきつくないが、周りの景色も単調で歩いていてとてもしんどかった.
午後3時30分にようやく雲辺寺の山門に辿り着いた.雲辺寺の境内は結構お参りの人達で賑わっていた.汗が引くまで境内で一休みしていると急激に寒くなった.やはり標高910mの山の上は寒い.吐く息が白かった.境内にあった休憩所の建物を借りて急いで乾いたTシャツに着替えた.山の上のお寺だったが、あまり風情のあるお寺ではなかったので、さっさとお参りを済ませ山を下りることにした.
午後4時10分雲辺寺を後にして、尾根沿いの遍路道へ向かった.境内から遍路道へ向かう途中に五百羅漢さんが道に沿って並べられていた.よく見るとどの羅漢さんもとても愛嬌のある顔をしている.羅漢さんに見送られながら山を下りていった.
尾根沿いの緩やかな稜線が700m程続き、その先から山の急斜面を下りていく道が続いていた.麓の景色を見下ろしながら快調に山道を下りていく.柔らかな土の道なので急な坂道でも足がズキズキするような痛みは感じない.遍路道の途中から麓を見下ろすと、溜池の数に圧倒された.畑の中に溜池があるというより、溜池の中に畑があると言った方が正解かもしれない.
山の麓に近づくにつれやたらと階段が多くなってきた.かなりハイピッチで山を下ってきたせいか、山を下りきった頃には結構膝ががくがくになっていた.午後5時過ぎ今夜の宿である民宿青空に到着した.
宿には埼玉のOさんが泊まっていた.他に白地荘で一緒だった女性お遍路さんと、明日からお遍路を始めるという年配の女性お遍路さん.都内から遊びに来ていた年配の男性が泊まっていた.
この宿のご主人はまだ30代前半ぐらいだろうか.奥さんと二人でこの宿を営んでいた.この宿を始めてからまだ数年だと言っていた.ご主人は徳島の池田町の出身で、民宿のできそうな物件を探していたらこの地に良い物件を見つけたので、ここで民宿を始めたのだという.雲辺寺の麓で自然の環境も良いし、ちょうど遍路道沿いにあるので民宿を営むには良い場所かもしれない.民宿青空はお遍路だけではなく一般の旅好きの客を引き寄せる魅力の有る宿で、旅好きの常連客が集う宿のようだ.
夕食後に皆で談笑していたら、ご主人が浸けたというマムシ酒を振る舞ってくれた.一升瓶の中にマムシがまるまる1匹浸けられている.試しに臭いだけ嗅せて貰ったが独特の臭いが鼻につき、私には飲めそうもなかった.瓶の中のマムシを見てしまうと余計に飲めなくなってしまった.
ご主人の話ではマムシ酒を作るには生きたままのマムシを一升瓶に入れ、マムシがおぼれない程度に水を入れてそのまま1ヶ月近く放置して体内の排泄物を綺麗にはき出させてから焼酎に漬けるのだそうだ.文字通り蛇の生殺しというところか.
またこの近辺を訪れる機会があれば、宿泊先として迷わずこの宿を選ぶだろう.宿のご主人と話をしていて気が付いたが、ここはもう香川県だった.いよいよ最後の涅槃の道場に入ったのだ.
起点
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経由地
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終点
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区間距離
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累積距離
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備考 |
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民宿 白地荘 |
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別格15番 箸蔵寺
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10.6 km |
10.6 km |
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別格15番 箸蔵寺 |
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ロープウェイ |
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ロープウェイ麓駅
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片道800円 |
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ロープウェイ麓駅 |
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県道268号線経由 |
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66番 雲辺寺
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17.1 km |
27.7 km |
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66番 雲辺寺 |
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民宿 青空屋
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4.5 km |
32.2 km |
この日の歩数:59,457 歩 【累積歩数:1,801,552 歩 】 歩行距離:32.2 km【累積歩行距離:1105.6 km 】
宿泊先: 民宿 青空屋
【 TEL 0875-27-7309 】
〒768-0052 香川県観音寺市粟井町奥谷4117-3
2食付き 6,300円
洗濯機・乾燥機: 有り(無料)
雲辺寺を降りて直ぐのところに有る、まだ開業して数年の新しい宿です.
旅好きの人たちから好評なようです.
Zoom Level: Bearing(Heading): Pitch: Grid Interval:
【補足】箸蔵寺から雲辺寺への山岳経路について
コースの概要
箸蔵寺から雲辺寺へ向かうコースとして、山道が主体の県境尾根伝いに歩く阿讃縦走コースもあ る.距離は約20km位あるので、普段山歩きをしている健脚な人でなければ厳しいかもしれない.
コースとしては箸蔵寺の大師堂裏にある登山口から箸蔵街道(金比羅さんから箸蔵寺へ向かう参道)を二軒茶屋まで行き、二軒茶屋からUターンするように猪ノ鼻峠へ向かう.猪ノ鼻峠の先からは四国のみちの『中蓮寺峰野鳥のみち』に合流し、中蓮寺峰からは四国のみちを離れて県境沿いの尾根道コースを取ることになる.
雲辺寺までそのまま県境沿いの尾根が続く.中蓮寺峰から雲辺寺方面へ向かわずに、そのまま四国のみちを辿って逆瀨池方面へ向かえば67番大興寺へ行くことができるだろう.
四国のみちについて(香川県ホームページ)
4.箸蔵街道(はしくらかいどう)をたどるみち
参考マップ: https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/10797/map4.pdf
3.中蓮寺峰野鳥のみち(ちゅうれんじほうやちょう)のみち
参考マップ: https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/10797/map3.pdf