今日は大普賢岳から和佐股方面へ一旦下りて、笙の窟(第72靡)へ立ち寄りたいところだが、笙の窟までは往復で二時間半は掛かりそうだ.笙の窟に立ち寄ると今夜の宿は行者還避難小屋ということになってしまう.これまで超スローペースで歩いてきたので、この辺で少し距離を稼いでおかないと予定通りに前鬼に下りられなくなってしまう.笙の窟に寄ることが出来ないのは無念だが、今回は諦めて今日は弥山まで足を延ばすことにした.
昨夜は二蔵小屋は満員で小屋の周りでテントが10張り程あっただろうか.テントを持たない人は小屋の軒先でシュラフ一枚で寝ていた.昨夜の冷え込みはきつかったのでさぞかし大変だっただろう.連休中に奥駈を行う場合にはテントは必携だ.
二年前の連休中に熊野本宮から前鬼までの大峯南奥駆(順峯)を歩いてから時間が経ってしまったが、再び大峯奥駈道を歩いてみることにした.本来なら順峯の続きで、前鬼から吉野までの北奥駈道を歩けば綺麗につながるのだが、前鬼までの交通手段の問題で丸一日無駄になってしまうので、今回は吉野から逆峯で前鬼へ下りることにした.
前回、三重の滝を訪れた時は昭文社の『山と高原地図:大峰山脈』の情報だけを頼りに三重の滝へ向かい、垢離取り場から沢沿いに下って滝の最下部へ出てしまうという痛恨のミスを犯してしまったが、今回は国土地理院の地形図できちんとルートを確認した上での再挑戦だ.
一晩中降り続いた雨も翌朝には上がりすっきりした青空が広がっていた.多くの人達は朝食が終わると直ぐに吉野方面へ向かう8:59分発のバスに乗るため前鬼口へ向けて山を下りて行った.私は直ぐには山を下りずに、先ず第二十八番靡の三重の滝へ行ってみることにした.
夜明けと共に同宿の人達は皆熊野本宮方面を目指して出発していった.私は今日は前鬼宿までの短距離なのでゆっくりしていた.まだ雨は降っていなかったが、辺り一面ガスっていて何時雨が降り出してもおかしくない状況だった.小屋番をしてくれたYさんがホラ貝を吹いて見送ってくれた.
今日も重い荷物を担いで厳しいアップダウンのある道を長時間歩かなければならない.なるべく早い時間に出発したい所だったが、二日連続の寝不足のため出発が遅くなってしまった.
朝7時前、川湯温泉のキャンプ場を後にして本宮へ向かう.奥駆道の本来のコースは大斎原から熊野川を渡って(禊ぎを受ける)七越峰へ向かう尾根道に入るらしいが、流石に熊野川の本流を渡渉する訳も行かないので備崎橋から七越峰へ向かう.
当初の計画では熊野本宮から吉野まで全区間を踏破する予定だったが、流石に一週間も休みを取る訳には行かないので、今回は仕方なく熊野本宮から前鬼宿までの南奥崖道と呼ばれる区間を歩く事にした.
大峯奥駈道は熊野本宮と吉野を結ぶ大峰山脈の主稜線を踏破する山岳縦走路で、75箇所の靡(なびき)と呼ばれる行場を辿って修行を重ねる総延長170kmにも及ぶ修験道の根本道場だ.