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2010
赤外線カメラで夜の水槽を覗いてみる(撮影編)
赤外線撮影は思ったよりも難しいかも
iSight を赤外線カメラに改造したのですが、今日ヨドバシカメラで安物のWEBカメラを探しに行ったら、何と赤外線撮影対応をうたった手頃そうなUSB WEBカメラを見つけてしまいました.工作が苦手な人は最初からこのWEBカメラを買った方が良いでしょう.DIGITAL COWBOY という所が出している製品で、NET Cowboy (DC-NCR20U) という製品名です.ヨドバシ価格で 5,480円でした.
リアル 200万画素クラスと表示してありますが、カメラとしての性能はイマイチのようで、1600×1200 モードでは 5fps しか対応できないようです.30fpsではVGA(640×480) まで落ちてしまいます.ただし、赤外線対応をうたっているだけあって、赤外カットフィルタは入っていないと外箱に明記してありますが、日光や外光が入るような場所ではまともな画像再現ができないという断り書きが書いてあります.
こんな製品を一般のWEBカメラコーナーで売ると、普通のWEBカメラとして期待して買った人達からクレームの嵐が来そうな気がするけど、大丈夫なのでしょうか.防犯コーナーなら問題ないと思うけど...
市販の赤外線WEBカメラ NET Cowboy DC-NCR20U
NetCowby の画像(左:赤外フィルタを通した画像 右:直接撮影)
ちょっと話がそれましたが、本題に戻って改造したiSightで実際に赤外撮影を行う上での問題点を幾つか挙げておきます.
問題点1.ピントが合わない
実はこれは最初から想定していたことなのですが、私が予想していた以上にピンとのずれが激しく、風景などの遠景の撮影は全くといって良いほど使い物になりません.
WEBカメラの光学系は殆どがパンフォーカスなので、赤外線での焦点のずれは問題にならないだろうと高をくくっていたのですが予想は大外れでした.写真に詳しい方はご存じだと思いますが、レンズの光学系の設計では可視光線を基準に行われているため、赤外線領域での焦点はレンズの設計値よりもずれてしまいます.このため昔の一眼レフカメラ用のレンズには、赤外線撮影用(確か750nm前後の赤外光を基準にしていたと思います)のピント補正マークが刻印されていました.
レンズに刻印されている赤外補正マーク(赤点)
iSightのようなWEBカメラの多くはオートフォーカス機能を持っており、通常の撮影では問題無いのですが、赤外線撮影ではこのオートフォーカス機能が災いとなります.レンズの焦点をマニュアルで設定できる機種であれば出力される画像を見ながら何とかピント合わせができるのですが、オートフォーカスではお手上げです.
実際にiSightを昼間の太陽光の元で風景を撮影してみたところ、ピンぼけで使い物になりませんでした.CCDセンサーとレンズ系の間に黒い薄手のゴムシートを挟んでCCDの撮像面の位置を後にずらせてみましたが、逆に焦点が近づいてしまいました.遠方に焦点を結ばせるには逆にレンズ側にCCDを近づけなければならないようです.これでは物理的にどうにもなりませんので、レンズの前面にでもピント補正用のレンズでも入れない限り遠景の被写体を撮影することは無理です.
このことは逆に近接(マクロ)撮影を行うにはかえって都合が良いことになります.実際に試してみたところ、レンズの手前数センチまでばっちりピントが合いました.実用性を考えるとやはりピントはマニュアルで調整したいところです.
実は、iSightには人間がメカニカルに設定できる訳ではありませんが、コンピュータからマニュアルでフォーカスを調整する機能が備わっています.この機能に対応しているアプリケーションはそれほど多くはないのですが、QuickTime BroadCaster では、カメラのオプション画面でiSightをマニュアルコントロールできるようになっています.iStopMotionなどのサードパーティー製のアプリケーションでもiSightのマニュアルコントロールに対応しているようですので、QuickTimeのライブラリの機能として実装されているようです.ただ、iSight意外の一般的なWEBカメラでこのマニュアルコントロール機能が使えるかどうかは不明です.(MacBook内蔵のUSB iSightではフォーカス機能は使えませんでした.恐らく他のUSBカメラでも使えないでしょう)
iStopMotionでのカメラのコントロールの様子
QuickTime Broadcaster でiSightのフォーカスをマニュアルコントロールしているところ
フォーカスコントロールの数値を100(無限遠?)まで持っていったのですが、それでもまだピンぼけでした.改造iSightではやはり風景撮影には向かないようです.近距離撮影ではそこそこピントが合うようですので、室内で撮影する分には何とかなりそうです.
近距離撮影では何とかピントの調整が行える
問題点2.十分な光量と比較的広範囲を照射可能な赤外線光源が必要
実際に水槽の中を赤外線撮影してみて分かったのですが、空気中よりも撮影の条件はさらに厳しいようです.実験に用いた赤外光源が貧弱で指向性が強すぎたということもあるでしょうが、水中では赤外線が届き難いという難題がありそうです.考えてみれば海の中では赤い光は殆ど届きませんよね.ましてや赤外線は尚更届きにくいのでしょう.海が青く見えるのは結構複雑な理由によるらしいのですが、水中では赤外線は圧倒的に不利なようです.
今回は比較的至近距離からの撮影なので、もっと強力な赤外線光源を用意すれば何とか実用的な撮影が可能となりそうです.
次回のペルクラの孵化の際は、孵化の様子を赤外線WEBカメラでストリーミングしてみようと思います.
夜のペルクラ君
ペルクラの孵化の様子
孵化の様子を赤外線撮影してみました. 孵化の様子(動画)