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2009
仔魚の餌について
仔魚に与える餌(シオミズツボワムシ)の準備
海水魚関係のブリーディングで一番大変なのは仔魚の初期飼料として与えるシオミズツボワムシの培養に手間が掛かることです.孵化してから1〜2週間の仔魚はシオミズツボワムシ程度の大きさの動物性プランクトンしか食べられません.シオミズツボワムシは水産養殖関係で仔魚の初期の餌として広く使われており、大量培養技術も確立され栽培漁業には欠くことのできないものです.
シオミズツボワムシの培養自体はそれほど難しくはありませんが、毎日のクロレラ給餌と週に2回程度の海水交換など面倒で手間の掛かる作業を伴います.仔魚に給餌する数時間前に栄養強化剤を与えて二次培養しなければならないのでとても厄介です.
シオミズツボワムシの培養でもう一つ厄介なのが淡水クロレラが日持ちしないということです.一般に出まわっている淡水クロレラは消費期限が20日程度しかありません.冷蔵庫での保管が必要で買いだめする訳にはいきません.クロレラ工業などでは、栄養強化したクロレラなどを製造販売しているようですが、業務用なので注文単位が数十リットル単位でとても個人で購入できるような代物ではありません.以前紹介した、太平洋貿易株式会社の通販サイトでは、物によっては1リットル単位で販売して貰えるようですが、それでも多すぎてとても使い切れません.100mlくらいずつ販売して貰えると良いのですが.
東京近郊でクロレラを扱っているショップとしては、町田の日海センターと横浜のマリンルートワンくらいでしょうか.
キョーリンから栄養強化済みの冷凍ワムシが市販されていますが、この冷凍ワムシが生のシオミズツボワムシの代わりになるかどうかはまだ何とも言えません.近日中に比較実験してみるつもりですので、結果が分かり次第報告する予定です.
クロレラを与えてワムシを繁殖する
上の写真はBICOM ARK 60 水槽の中でシオミズツボワムシを培養している様子ですが、クロレラ入りの海水をエアレーションすると周りに飛沫が飛び散り、辺りがクロレラの緑色に汚染されてしまいます.できれば広口瓶のような蓋の付いた容器を使って培養するのが良いでしょう.私はCalibSeaのミネラルマッドの空き容器を使っています.
仔魚にベトナム産アルテミアとワムシ(小さな白っぽい点)を与えている様子
【シオミズツボワムシ】
広塩性の動物性プランクトンで、水温27度、pH8.0、塩分14psu(practical salinity unit:電気伝導度から塩分に換算する濃度の表示方法:実用塩分と呼ぶ)程度の汽水域で最も良く繁殖する.平均寿命は水温30度で約3日で、水温が10度以下になると耐久卵を形成して死亡する.雌の体長は 120〜350μm で、釣り鐘のような形をしている.シオミズツボワムシは植物プランクトン(緑藻類やらん藻類)を摂餌し、淡水クロレラ、ナンノクロロプシス(海産クロレラ)、パン酵母、油脂酵母などを餌として培養することが多い.
シオミズツボワムシは雌だけで爆発的に増える単性生殖と雄の出現に伴い耐久卵を形成する両性生殖を行っている.淡水クロレラなどで培養した場合はEPAやDHAなどの必須脂肪酸、各種ビタミン類などが不足することから、これらの必須栄養素をシオミズツボワムシに取り込ませる二次培養が必要になる.
(実教出版の水産高校向けの教科書 『栽培漁業』 文部科学省著 の内容を参考に編纂)